手外科

1. ご挨拶と当診療班の診療方針

当診療班では、手関節や肘関節をはじめとする上肢の「機能再建」を専門とし、生まれつきの手や肘の病気(先天異常)からスポーツ障害、加齢に伴う変形性関節症まで、幅広い患者さんの治療を行っています。手や肘は、人間が社会生活を営み、自己を表現するために最も緻密な動きを求められる器官です。当専門外来では、単に病気を治療するだけでなく、患者さん一人ひとりの日常生活や仕事、スポーツへの復帰を見据えた機能回復をゴールとしています。他院で治療に難渋している症例や、専門的な診断・治療が必要な疾患についても、最新の医学的知見に基づいた診療を行っています。また、関連する臨床研究で得られた成果を診療へ生かし、質の高い医療の提供に努めています。どうぞお気軽にご相談ください。

2. 主な対象疾患と治療の特徴

① 小児先天異常(手足の先天変形)

生まれつき指の数が多い(多指症)、隣り合う指がくっついている(合指症)、あるいは橈骨の手前が欠損している(橈側列形成不全症)など、お子様の成長に大きく関わる先天異常の治療を行っています。当科では、早期の矯正装具療法から始まり、機能的かつ美的な再建を行うため、骨切り術や指の移行術(持続的なリハビリを組み合わせた段階的再建)などを組み合わせて適切な時期に手術を行います。

・複雑な母指多指症に対する手術

複雑な母指多指症に対する手術

(Kodama A et al. Cureus. 2024より引用・改変)

・橈側列形成不全症に対する治療

橈側列形成不全症に対する治療

(Kodama A et al. J Hand Surg Asian Pac Vol. 2026より引用・改変)

② 手の変形性関節症(母指CM関節症など)

物をつまむ時や、瓶のフタを開ける時に親指の付け根が痛む「母指CM関節症」は、非常に頻度の高い疾患です。当科では、関節鏡視下手術や関節を温存する「第1中手骨伸展骨切り術」,「関節形成術」などを行っています。

当科の研究:関節鏡を用いた研究を行い、骨切り術によるCM関節への負荷改善を検証しています。

骨切り術によるCM関節への負荷改善の検証 CM関節への負荷解析(Control/Pre-operative/Post-operative)

(Ishibashi S, Kodama A et al. J Orthop Surg Res.より引用・改変)

③ 末梢神経障害(手のしびれ・麻痺)

手のしびれや筋肉の萎縮を引き起こす「肘部管症候群」や「手根管症候群」に対し、低侵襲な内視鏡手術や微小外科手術を行っています。

当科の研究:手根管症候群に対し、反射マーカーを用いた「3D動態解析」で親指の運動機能を評価し、手術により親指の関節可動域や軌道面積が有意に回復することを実証し、障害の程度が「文字を書く」「ボタンを留める」といったつまみ動作の不自由さと直結していることを解明しました。この客観的評価を正確な診断や最適な治療選択に役立てています。(Kodama A et al. J Hand Surg Eur 2021, Kodama A et al. J Hand Surg Eur 2024)

反射マーカーを用いた3D動態解析 手術前後の親指可動域の変化

重度麻痺に対する神経移行術
筋肉の萎縮が進行した重度の末梢神経損傷に対し、「神経移行術」という、健康な神経の力を借りて早期の神経回復を促す再建術を取り入れています。基礎研究において、損傷の重症度に応じた移行神経の有効性を証明しており、麻痺からの早期復帰を目指しています。(Munemori M, Kodama A et al. PLoS One.2026より引用)

神経移行術の重症度モデル 移行神経の組織染色像

3. 野球肘(スポーツ障害)へのアプローチと障害検診

当診療班が特に専門としている分野の一つが、野球による肘のスポーツ障害です。成長期のお子様と、成人(プロレベル)のアスリートでは、発生する障害の病態が異なります。

少年期に多い障害(小児の内側上顆骨端障害・小頭離断性骨軟骨炎)
成長期の過度な投球は、肘の内側が引っ張られる「内側上顆骨端障害」や、外側の骨が壊死を起こす「小頭離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)」を引き起こします。特に小頭離断性骨軟骨炎は初期症状が乏しいため、早期発見が極めて重要です。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の治療

青年期〜成人に多い障害(尺側側副靭帯損傷・後内側インピンジメント)
繰り返される強い投球ストレスにより、肘を支える靭帯が緩む「尺側側副靭帯(UCL)損傷」や、肘の後内側で骨同士が衝突して痛む「後内側インピンジメント」が発生します。

尺側側副靭帯損傷の治療

【当科の研究:CT解析による骨棘分布の解明】

野球選手の投球肘を対象としたCT画像解析により、投球障害に特徴的な骨棘形成部位を明らかにし、適切な手術計画に役立てています。(Munemori M, Kodama A et al. J Shoulder Elbow Surg. 2026)

投球肘のCT解析(骨棘形成部位A・B) 投球肘のCT解析(骨棘分布1) 投球肘のCT解析(骨棘分布2)

【少年野球の野球障害検診】

当科では、地域の少年野球チームを対象に野球障害検診を定期的に実施しています。

少年野球の野球障害検診の様子 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 保存加療例

検診内容: 専門医による身体所見チェック、および超音波(エコー)装置を用いた上腕骨小頭離断性骨軟骨炎のスクリーニング。

目的:自覚症状の少ない上腕骨小頭離断性骨軟骨炎などを早期に発見し、将来にわたって野球を続けられるよう支援しています。

※検診の開催日程や参加お申し込み方法については、下記WEBサイト内の「お知らせ・検診案内」ページをご覧ください。
広島野球障害検診(HYMECS)インスタグラム
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