教室の歴史
広島大学医学部整形外科教室は、昭和32年1月に初代教授伊藤鐡夫により開設されました。同年5月27日に呉市広町の附属病院で診療が開始され、以後この日を開講記念日と定められました。同年9月に医学部が広島市に移転するとともに、現在の広島市霞町に病院が移されました。
昭和32年 藤堂先生宅にて(呉市)
伊藤教授は、昭和14年3月に京都大学医学部を卒業後、昭和14年4月に京都大学医学部副手、昭和14年5月に陸軍軍医候補生として入隊(廣島11連隊)、昭和18年9月に陸軍軍医大尉となり、終戦後の昭和20年9月には召集解除後京都大学整形外科に復学しました。昭和23年に山口大学整形外科の初代教授として赴任し、昭和32年に広島大学整形外科の初代教授に転任しました。主な研究テーマは、脳性麻痺の病理学的基礎研究と変形性股関節症であり、その後脊椎外科、末梢神経外科と研究領域を発展させました。日本整形外科学会名誉会員、日本手の外科学会名誉会員、国際整形災害外科学会名誉会員を務め、その業績に対して昭和61年には勲三等旭日中綬章を授与され、平成14年には天皇陛下より正四位を賜りました。
昭和39年3月に、第2代教授として津下健哉が就任しました。津下教授は「手の外科」を中心に積極的に臨床及び基礎的研究を進め、それは上肢の血管系,リンパ系の基礎研究から,のちに微小血管の縫合へと発展し、これらの成果は手の外科の世界的な教科書として親しまれている「手の外科の実際」や「手の外科アトラス」に示されています。主な主催学会として、昭和39年に第23回中部日本整形外科災害外科学会、昭和43年に第11回日本手の外科学会、昭和49年に1st Joint Meeting of J and A Hand Surgeonsを開催しました。アメリカ手の外科学会名誉会員、南アフリカ手の外科学会名誉会員を務め、平成4年にはInternational Pioneers of Hand Surgeryに選出されました。これらの業績や社会貢献に対し、昭和62年には中国文化賞を受賞、平成9年には勲三等旭日中綬章を授与されました。
昭和60年4月に、第3代教授として生田義和が就任しました。生田教授は「手の外科」を主な研究テーマとし、津下名誉教授による手の外科の歴史を引き継ぎながらもその業績を大きく発展させ,手の外科領域にマイクロサージャリ―の領域を導入されました。これにより津下教授の手の外科と生田教授のマイクロに対する国内、海外からの見学希望者が激増し、広島大学整形外科教室は「手の外科」の領域において日本だけでなく世界の中の拠点として発展してきました。主な主催学会として、平成 6年に第37回日本手の外科学会、平成13年に第27回日本整形外科スポーツ医学会、第16回日本整形外科学会基礎学術集会を開催しました。日本手の外科学会理事長、日本マイクロサージャリー学会理事長を歴任し、日本手の外科学会名誉会員、Congress President of 5th APFSSHを務め、また英文雑誌”Hand Surgery” のEditor-in-Chief としても活躍しました。
平成14年4月より、第4代教授として越智光夫が就任しました。越智教授は膝関節外科・末梢神経・再生医学を中心に基礎研究から臨床研究・応用とこれまでの教室の実績を礎に更に進化・発展させ、膝関節外科、再生医学の世界において、医学の科学性をモチーフに世界をリードしています。特に、軟骨の再生医療については、前任の島根医科大学整形外科学教室の教授時代より取り組んできたコラーゲンゲル自家培養軟骨細胞移植を世界に先駆けて臨床応用し、その臨床実績が認められ平成25年に同法が保険収載となりました。また、今後の広島大学整形外科学教室の将来を見越し、再生医療に関しての世界に冠たる研究実績を残し、伝統的整形外科治療を更に新しくした形で基礎、臨床研究を行っています。主な主催学会として、平成16年に第29回日本膝関節学会、平成18年に第17回日本末梢神経学会、平成22年に第9回日本再生医療学会総会、平成23年にPost ISAKOS Meeting in Hiroshima、平成25年に第86回日本整形外科学術総会、第40回日本股関節学会、平成26年は1st Asian-Pacific Knee Arthroscopy Sports Medicine Society、第6回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会を開催しました。日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会理事長、日本末梢神経学会理事長、日本炎症・再生医学会理事、日本再生医療学会理事を歴任し、Honorary Member of Arthroscopy Association of North America、Editorial Board Member of Journal of Arthroscopy、Members at Large of ISAKOS、International Advisory Board of Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy (KSSTA)に選出され、これまでの基礎研究、臨床研究における業績、また高い社会貢献が認められ、平成16年に内閣府の日本学術会議会長賞、平成26年に厚生労働大臣賞を授与されました。
平成28年1月より第5代教授として安達伸生が就任しました。安達教授は膝関節外科、足の外科, スポーツ医学、軟骨再生医療を中心に基礎・臨床研究を行っており、特に軟骨再生の領域においては自家軟骨培養移植を臨床の場で実践し、広く世界にその実績を紹介しています。現在、Editorial board member of Journal of Orthopaedic Science, Editorial board member of KSSTA, Editorial advisor of BMC Musculoskeletal Disordersに選出されています。21世紀を迎え飛躍的に進歩する医学・医療をリードし、また豊かな医療を提供するために、これまで積み重ねてきた優れた業績を基に一層の研鐙を重ね、また若手医師の指導には‛early exposure’を念頭に、近未来の医療に貢献できる医療人の育成を目指して教室の運営にあたっています。