教授挨拶

Professor Nobuo Adachi 広島大学医学部整形外科学教室は昭和32年に初代伊藤鐡夫教授により開設されました。以後、第2代津下健哉教授、第3代生田義和教授、第4代越智光夫教授と引き継がれ、私で第5代となります。開設以来約60年となる歴史と伝統ある整形外科学教室です。

 皆さん「運動器」という言葉をご存じでしょうか?運動器とは骨、軟骨、筋肉、靱帯、神経など人体の運動を司る組織や器官のことであり、整形外科は四肢、体幹の運動器の健康を守る専門家です。現在の高齢化社会による変性疾患の増加、スポーツ外傷・障害、交通事故や労災事故による運動器損傷など整形外科に対する社会的ニーズはますます大きくなっています。広島大学整形外科では膝関節外科、股関節外科、肩関節外科、手の外科、脊椎・脊髄外科、腫瘍外科、形成外科、リハビリテーションなどのサブグループがあります。それぞれの分野の専門家が日本のみならず世界的にもトップクラスの診療・研究を行い、保存的治療から最先端の再生医療、新生児、小児から超高齢者まで多くの患者さんの運動器の健康、整形外科医療の発展に寄与しています。特に軟骨再生医療では長年の研究の結果、越智前教授が開発された自家培養軟骨移植(商品名:ジャック®)が平成25年に保険適応となり、広く全国で行える治療になりました。私たち広島大学整形外科では、一生涯人工関節を行うことなく自分の足で健康的に歩き、生活できるような再生医療に向けて日々研究を行っています。また、広島は元々非常にスポーツの盛んな地域であり、広島東洋カープ、サンフレッチェ広島、JTサンダース、広島ドラゴンフライズなどのプロスポーツチームがあります。広島大学整形外科ではこれらのプロチームとも密接に連携し、選手のメディカルチェックや外傷の治療、リハビリテーションなど多角的に関与しサポート体制を整えています。プロ選手の治療方法は一般の方々の治療方法と異なるわけではありません。しかしながら非常に高いパフォーマンスレベルで早期に競技復帰を目指す彼らの要求に応えるべく、治療方法やリハビリテーションを改善、改良することは一般の方々の治療にも大きく貢献するものと考えており、今後もプロスポーツには積極的に関与していきたいと考えています。

 私たちの使命には大きく分け、診療、教育、研究の分野があります。医師としての最終的な目標は病める人々に高度で先進的かつ全人的な医療を提供することです。そのためには地域社会、国際社会に貢献できる良医の育成とともに独創性に富んだ基礎および臨床研究が重要であり、診療、教育、研究をバランスよく遂行することが必要です。地域貢献のみならず、国際的にも貢献できるグローバルな人材育成のためには夢と情熱を持ち続け研鑽することが大切であり、その実現に向けて充実した臨床研修および基礎研究体制を整えています。

 広島大学整形外科では今後も最先端の診療を行い患者さんの運動器の健康に大きく寄与するとともに、今後の整形外科診療に貢献する臨床、基礎研究に邁進していきます。広島大学整形外科に少しでも興味を持たれた学部生、研修医の先生方、また当科で治療を受けたいとお考えの患者の皆さん、私たちのホームページをご覧ください。

広島大学 大学院医系科学研究科
整形外科学教授

安達 伸生